デジタルカメラの普及により急激に衰退した写真フィルムとその関連事業。その事業構造の転換に失敗したKODAK社をベースにしたビジネス小説。コダックの日本法人を舞台に、事業構造の変換の必要性に何十年も前から気づいていたにも関わらず、大企業ゆえに身動きが取れなくなった巨象の末路と、そこで働くビジネスマンと写真に関する物語が描かれている。もともとは2012年から文芸誌で連載発表され、2013年に単行本、そして2016年に文庫化された。
デジカメが普及しても、サービスプリントの需要は減らないという予測もあったが、現像液や印画紙、サービスプリントなどの関連事業の売上高が急落。フォトCDやAPS、3DOに、ストックフォトのCD-ROMなど、今となっては懐かしい、泡沫と消えた数々の製品が登場し、世の中のあらゆる場面で、写真が、本格的にデジタルデータ化されていく時代の到来が描かれている。文庫化されるこの3年までの間に、写真のデジタル化はさらに進み、携帯端末によるコンパクトデジカメにも劣らない写真や動画の撮影、クラウドなどによる写真共有、AIによる画像認識など、写真をめぐる環境は想像できないぐらい進化しており、たとえ、写真に関する事業構造の転換に成功していたとしても、次から次へとくる荒波に、果たしてコダックが生き残れたかは、正直心許ない。
ただ一方で、プリントや家族アルバムといった写真文化の衰退も少し悲観的に描かれているが、実際はSNSなどを通じて、写真を撮る、見る、見せ合うという機会はより増えている昨今の風潮というのは、ちょっと暗くなりがちな同書の結末を、良い意味で裏切っているのではないだろうか。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334772529
0 件のコメント:
コメントを投稿