フランスの小説家、ジャーナリストであり、写真についてのエッセイもあるグルニエによる、私的記憶によるパリの断片集。番地を鍵に、第二次世界大戦の占領期からレジスタンスの活動、戦後ジャーナリストとして復興期をたくましく生きた自分の人生と、写真家や小説家、詩人などが行き交う20世紀パリの様々な出来事の記憶をまとめて、グルニエがテンポよく語っている。
グルニエの若い頃の友達で、その伝手で週刊誌の職を得た女性が、たまたまメッセンジャーが休みだった時に、ブラッサイの元に写真を受け取りにいったことが縁で結婚した話や、ブラッサイのアトリエを訪れたジャン・ジュネが、窓の外から見渡せるサンテ刑務所(彼はかつてそこに収監されていた)の姿に目をみはるなど、写真に関連する話も多い。
ブラッサイと交流のあったヘンリー・ミラーは、モンパルナス大通りから折れたところにあるカンパーニュ=プルミエール通りに住んでいたとある。本書ではふれられていないが、その一方通行の路地こそ、かつてアジェのアトリエがあり、数十m先にはマン・レイのアトリエ、そしてそこでアシスタントをしていたベレニス・アボットが、レイから見せてもらったアジェの写真をいたく気に入り、近所のアジェを訪れ、ポートレートを撮るなど、写真の歴史的にも非常に興味深い場所。パリの街と記憶は、写真史そのものであると言いえてしまいそうなぐらい、濃密な歴史が刻まれており、本書でもその一端を知ることができる。
パリに生きた一個人の記憶による地理学の語りと考えると、都市は違えど、東京の写真をベースに、その街角や雑踏、市井の人々を語る荒木さんの『東京は、秋』などを何となく思い出す。
http://www.msz.co.jp/book/detail/08555.html
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