超常現象研究家・中岡俊哉の評伝。中岡は、ベストセラーとなった『恐怖の心霊写真集』や『狐狗狸さんの秘密』など超常現象に関する著作を200冊以上上梓。また、出版だけではなく、テレビ番組の企画、出演を通じて、日本にオカルトブームをもたらし、社会現象を起こした。そんな彼の人生を、関係者の証言などとともに振り返った本書では、中岡本人の生涯だけではなく、それに関連した戦後の出版事情や、テレビ業界の裏側の歴史も垣間みえて非常に興味深い。
世界初の心霊写真集と評される『恐怖の心霊写真集』(二見書房、1974年)の出版の経緯も本書に詳しい。1960年代から70年代にかけて、新聞や雑誌で「不思議な写真」が頻繁に紹介され、また中岡自身も自著や、出演したTV番組で心霊写真を披露し、心霊科学の立場から鑑定してきた。その反応はよく、それを見聞きした一般人から、おびただしい数の鑑定依頼の写真が寄せられるようになってきたという。心霊・超常現象を盲信するわけではなく、実際に見て確かめ、様々な考察を積み重ねた上で科学的に究明することをモットーとした中岡にとって、これらの写真は、心霊の存在を証明するための貴重な資料となった。写真集は発売後、瞬く間にベストセラーとなったが、本書では、そのヒットの要因を、前例のない企画であったこと、心霊写真が特別な人ではなく一般の人が撮ったものであるというリアリティ、すべての心霊写真に中岡の鑑定書がついており、霊体の種類、写真に写る理由、フィルムに感光するメカニズムについて、中岡が考え抜き、研究者にもチェックしてもらった仮説が支持された点をあげている。翌年には、続編が出版され、一部カラー写真が採用されたこともあり、前作に続き多くの読者を得た。このシリーズは全7巻、トータルで150万部を売り上げたという。同シリーズにより、心霊写真なるものが一般に認知され大衆化したこともあり、人々が心霊写真に抱く不安や恐怖は、少なくなっていった。近年アナログのフィルムカメラがほぼ消滅し、写真のデジタル化による加工技術が進んで、心霊写真のようなものを最初から作り物ではないかと疑う時代にあって、同写真集は当時の人々が心霊写真に抱いていた気持ちを知るための貴重な歴史資料にもなっている。
中岡の生涯を振り返った本書を読むとよく分かるが、コックリさんでも心霊写真でも、中岡が巻き起こした社会現象は、大体似たような道を辿っている。局所的に不思議なオカルト現象が巻き起こっていて、それに恐れや不安、興味を感じている人の声が中岡に寄せられたり、また彼自身が発掘したりする。それを科学的に証明すべく、徹底的なリサーチを行い、そしてその結果を著作という形で発表したり、TV番組を企画・制作していく中で、全国的に広がり、興味を持っていた人が一斉に飛びつき、社会現象になる。そうすると今度は、同じメディアの中から、それを疑問視する声があがり、バッシングが巻き起こり、ブームが終息する。通常、ブームの終焉とともに、その存在を否定されて、消えていく人が多い中、中岡は、何度も社会現象の火元となり、そのブームの寵児として、メディアに取り上げられている。それは、決してブームを巻き起こすためだけに面白おかしく適当なことを伝えているのではなく、自分自身が直接目にして信じたものを、自分なりの仮説に基づいて、正直に解説し、取り上げてきたことにあるように思われる。
その正直さは、本書でも紹介されている中岡式の「心霊写真鑑定法」にもあらわれている。中岡は、鑑定にあたり、それらしく見える写真を排除し、残った1割について裏付け調査を行い、さらには科学者が開発したという「霊気感応系」なるもので判定合格したもののみを、「心霊写真」と認め、鑑定書を発行してきた。生涯3万点の写真を鑑定したが、確信を持って認定したものは500枚に満たないという厳しさと正直さが、中岡が一般の読者や視聴者から支持され、様々なブームの衰勢にも関わらず、常に起用されてきた理由なのかもしれない。
http://www.shinchosha.co.jp/book/324533/
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