2017年6月30日金曜日

ジュリー・オオツカ(岩本正恵訳、小竹由美子訳)『屋根裏の仏さま』(新潮社、2016年)

 1900年代初頭、ハワイやアメリカ本土に単身で移住した独身男性は、結婚したくても、法律上現地の白人女性とは結婚できず、また日本に帰って花嫁を連れて帰る時間も、お金もなかった。そんな中、1908年には、日本からの移民を自主制限する「日米紳士協定」により、家族以外の渡米はできなくなってしまった。そのような事情から生み出されたのが、「写真結婚」という方法で、移住者はアメリカにいながら、故郷の親戚などを通じ、写真の交換によるお見合いをして籍を入れ、正式に妻となったものを呼び寄せた。このようにしてやってきた花嫁は「写真花嫁(Picture Bride)」と呼ばれた。しかしこの「写真結婚」による「写真花嫁」も1920年(大正9年)には禁止され、約10年ほどで、その歴史は終わった。第二次世界大戦後、兵士と国際結婚して、アメリカに渡った「戦争花嫁」の先駆的存在でもある。

 何とかして妻を迎え入れたいがために、何十年も前の写真を使ってお見合いをし、実際に会ってみたら、写真と全然違ったということも多かったらしく、本書でも幾つかそのようなエピソードが登場する。新天地に嫁いで幸せな生活を送る人もいれば、一方でその後の人生を狂わされた人もおり、写真によってもたらされる運命の不思議が、「写真花嫁」にはある。

 本書は、この「写真花嫁」たちの特定の誰かを主人公にした物語ではなく、またその歴史を俯瞰的かつ客観的に語った歴史書でもない。「わたしたちは」という語り出しで、たくさんの「写真花嫁」たちの声が集められ、それがさざなみのように広がっている。断片的ながら具体性をもった個人の経験や記憶が集まり重なることで、この時代に「写真花嫁」として暮らした人々の姿が、重みをもって生き生きと現れてくる様には圧倒される。写真見合いによる渡米から結婚、慣れない土地での暮らし、出産と子育て、そして太平洋戦争による強制収容。日系移民として苦難の道を歩いた人々の忘れ去られてしまった声やつぶやきが、ひたひたと満ちてくるようである。

http://www.shinchosha.co.jp/book/590125/

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